ルノワールの「ピアノを弾く少女たち」
子どもの頃、山深い町の小さな教員住宅にピアノがやって来ました。
ちょうどこの絵に描かれているような木目調のアップライトで、幼い私に両親が買い与えてくれたのです。
明るい色合いが美しく、自分の部屋が全く別の素敵な空間になったようで、私はしばらくぼうっと見惚れていました。
北国の山奥の冬はしんしんと雪が降り続き、
真っ白に覆われた平屋の家はしんと静かで不思議に暖かく、ピアノからは少しくぐもったような親密な音が鳴るのでした。
壁には「ピアノを弾く少女たち」の複製画が飾られており、私は練習の合間におやつのりんごを齧り、ココアを飲みながら毎日毎日この絵を眺めました。
描かれた少女の長い金髪やドレス、内装品がとても優雅でまるでお姫さまのよう。でも、ピアノは私のとそっくりで・・・いつの間にか、自分もこの絵の中に入り込んだような親近感を抱いていたのでした。
・・長い月日が過ぎ、引っ越しを繰り返し、とうの昔にそのピアノも複製画もありません。
でも、2年ほど前、美術館に本物のこの絵がやって来たのです。
私はもちろん絵と対面し、もちろん複製画を購入し、昔とそっくりの額に入れて部屋に飾りました。
これからもずっとずっと一緒に過ごせるようになったのです♪